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松葉とお梅

企画:異天列

父:松葉

娘:お梅

 

長坂にて屋台茶屋

ぶんぷくを営む狸の親子。

変化の苦手な娘のため、人目を気にせず茶屋ができる長坂に乗船した。
父は人に化けるのが得意で、人の手の方が茶を入れやすいと、
ほとんど狸の姿に戻らない。

松葉は物腰柔らかく、見た目通りの優しい父。
生まれも育ちも江戸の田舎で、江戸弁を遣う。
そのため、お梅が三河弁を遣い始めたときは、心底驚いたとか。
何か思い入れがあるのか、一つの茶釜を使い続け、大切にしている。

「へえ、あれは娘のお梅と申しやす。
男手一つで育てたもんですから、
ガサツになりゃあしねえかと心配したもんですが、
なんのこたあねえ。
反動でしょうかね、娘らしく、ひらひらとしたもんが好きなようで。
最近は店の装飾も変えられちまって、
困ったもんです」

 


お梅はしっかり者の看板娘。
物心ついた頃には、屋台茶屋の手伝いを始めていたが、
人に上手く化けられないため、なかなか表に出られずにいた。
父の計らいで長坂に移ってからは、活き活きと接客に励む。
一方で店の装飾を少女趣味に変え始め、父の頭を悩ませてもいる。
大きくなるまで父が三河地方に留まっていたせいか、
いつの間にやらこてこての三河弁を話すようになった。

「ちょっとお父さん、今、ぼうっとしとっただら。
また火傷するに。
人の皮は薄いんだで、気をつけりんよ。
あたしじゃ、まだお父さんみたいに上手いことお茶入れられんもんで、
大火傷なんかしちゃったら、お店休まんといかんくなるじゃん」

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